tawagoto9776Kayama’s diary

60歳から1年後に会社を退職し、登山、ジョギング、キャンプ、料理等々の執筆を始める。

怖い話 4 あれはキツネ火だったのか?

                                                                                                61歳のたわごと No. 12
  初めはこの話は、記載するつもりがなかった。なぜならば、あまりにも不確実すぎて、ただ単なる何かの見間違いであったのかとも思えるので、別段“怖い話”に加えるのも行き過ぎている、と思ったからである。

   しかし、仙丈ケ岳頂上直下にある、仙丈小屋に2018年8月のとある日に泊まった時に、夕食までの時間がまだかなりあったので、小屋にあった本である、“山怪 山と渓谷社発刊 田中 康弘署“ を読んで気が変わった。

 その本である “山怪” の中の秋田県マタギの話によると、キツネに化かされた話や、キツネ火と思しき話が多数でてくる。このような話は単に何かの間違え、であるとするのは簡単であるが、この本によると、あまりにそのような例が多いので、むかしから言われているキツネによる怪奇現象なるものは、もしやなんらかの形で存在するのではないか、と私も思うようになってきた。

 話は私が経験した話に変わる。

 わたしの実家は小売商を営んでおり、ある日注文を受けた品を、母親と一緒に自動車に乗って届けに行った夕暮れ時の話で、私がまだ中学生になったばかりのことだったように思うが、すでに明確な年は記憶していない。

 注文の品物を届け終わったが、そのあたりは非常に寂しく、街灯の類はなく、人影も全くない場所であった。また左右は低い丘に囲まれていたことも記憶している。またそこは、何か気味の悪い感覚があったことを、今でも覚えている。

 その時は配達が終わり、自動車へと母親と一緒に戻る途中であったが、すこし離れた道の真ん中に “焚火” のような火が見えたのである。その火は通常の “焚火” と少し異なり、火の上の部分がやけにちぎれて、いくつにも分かれてゆらゆら燃えているのである。ちょうど上部分と下の部分の火が分離して上部分はいくつのもの炎に分かれて見えたのである。

  その場所に居た私は興味本位に、その “焚火” にもっと近寄り、その実態をもう少し詳細に把握しようとして歩み始めた、とその時に母親に手を捕まれて、「気味悪いから行っちゃだめだよ。」と言われ、その時はそのまま停車していた自家用の車に戻って帰宅することとなった。

 

  その後、ある中学生の同級生から、あの辺りには小さな白キツネが居た、との言い伝えがあることを聞いた。その話によると、その白い小さなキツネは尾が何本もあった、と言う。
  その小さな白キツネは、その地域に害を及ぼすたちの悪い人が来た時に、着ている衣服に侵入し、それが元でその人は神経に異常をきたすようになってしまった、と言う。

 

  その話を聞いた当時は、私は全くその話を信じなかったが、仙丈ケ岳直下の仙丈小屋で “山怪” という本を読み、また中学生のころの記憶が蘇った後に、にわかにその“小さな何本も尾がある白キツネ”の話を思い出した次第である。

 
                                                                                                                   香川 潤(記)