怖い話3 海岸の幽霊(61年程の人生で、体験または聞いた怖い話)
61歳のたわごとNo. 11
これは確か私が中学2年生の時のことであったと思う。
私の家は店で商売を営んでいた。母親も商売を父親とともに一緒にやっていたがため、子供4人の面倒と、家事全般まで手が回らなかった。このため、私の父親の実妹が、私の家に家事を手伝いに来てくれていた時期がある。
この話はその親戚の叔母さんから聞いた話である。その叔母さんも父親と同じで、幼少のころから地元に住んでいて、その時までに至っていたので、地元での顔見知りが多く、ある地元の知り合いから聞いた話だ、と言っていた。
その日、その叔母さんは息を切らして私の家に戻ってきた。そして私の顔を見るなり、話し始めた。その時に聞いた話は以下の通り。
おととい、某お寺下の海岸で幽霊がでて大変だったそうだった。
夜中の12時を過ぎたころ、二人の男が居酒屋で酒を飲んだ後の帰り道だった。
二人が某お寺の前あたりまで来た時に、一人が“用を足してくる”と言って、
海岸まで下りていった。そして“用を足している”その最中であった。
「寒いから服をかしておくれ。」とその用を足している男の背後から両腕を回して、その男の両目を両手で目隠をしながら懇願した。
当然その男は大いに狼狽し、目隠している両腕を振り払い、上で待っているもう一人の男のところへ急いで戻った。そして “用を足している” 最中の出来事を話したのであるが、上で待っていた男は信用するはずがない。
しかし、その時二人は暗い海面上に、真っ赤な布切をまとった女性らしき姿が居ることに気が付いた。そう、後ろから両腕をまわし、目隠しをし、服がほしいと懇願した、その女性であった。
その女性は海の上で浮遊しながら、両腕を頭の上あたりに上げて、二人の男に手招きをしていた。
その後、その女性の幽霊が出たといわれた場所には、お坊さんが来てお経を上げ、供養のためのお札が立てられた。しかし今はその場所一体の海岸が埋め立てられ、道路が建設され、多くの家も建っている。
50年程前の海岸。 左上の坂を上がり切ったあたりから、海岸にくだったあたりに、
女性の幽霊がでた、と言われている。
現在の海岸
香川 潤 (記)